2月2日(木)、とくぎんトモニプラザにおいて、米谷春夫氏(株式会社マイヤ 代表取締役会長)を講師に迎え、『東日本大震災負けてなるものか!』と題して、講演会が開催された。本セミナーはインフラ・防災委員会の企画により、岩手経済同友会のご協力を得て実現、米谷氏には遠路、岩手県からお越しいただいた。三好代表幹事、越智インフラ・防災委員会委員長をはじめ48名が参加した。
実際に震災を経験し、陣頭指揮をとられた米谷氏のお話はリアリティに溢れ、ひしひしとその想いが伝わり、参加者は聴き入った。以下は講演の要旨である。
<講演要旨>
株式会社マイヤは地域で圧倒的なシェアを有するスーパーマーケットチェーン店を運営。特段の修羅場もなく64年間生きてきたが、東京出張中にあの大震災、大津波が襲った。多くの店舗が被災し全壊したが、就業中の従業員やお客様は全員無事だった。買い物かごで頭を保護するなど、お客様の安全確保や避難優先に徹し、それを見届けた後に従業員が避難した。これは、三陸に30年以内に99%の確率で巨大地震が発生するという予測から、備えてきたことにほかならない。
マニュアルを作成し、年間2回の防災訓練は厳しく真剣に行ってきた。現場責任者(店長)の迅速な判断と適確な指示が多くの命を救ったと自負している。ほかにも、衛星電話の設置、地震保険加入、内陸部への商品備蓄など様々な対策を講じていた。
発災後速やかに岩手に帰県し、津波による生々しい現状を目の当たりにする中、陣頭指揮をとり、どうしたらお客様が喜んでくれるのかだけを考えた。取引先に毛布やコメの供給を依頼し、コメは1㎏の小袋に分けて販売したが、だれも文句は言わない。駐車場での販売、出張販売所の開設、移動販売車による供給など手段を尽くした。ここで大切なことはトップの姿勢であり、クイックレスポンスが必要だ。社員には、「ファイティング・スピリットを燃やせ!」「商品を売るのではなく、幸せを売るんだ」「お客様の暮らしを守れ!」と伝え鼓舞した。
震災により新たに得たものもあった。お客様からは「ありがとう」の声をたくさんいただき、うれしかった。スーパーマーケットは地域の暮らしを支えるライフライン、必要不可欠なインフラであるという誇りを感じることができた。マニュアルを具現化し現場の意思を尊重して任せる、「現場力」の信頼度は向上した。健全なコーポレート・カルチャー(企業文化)を創ることの重要性を再認識することができた。また、新たなネットワークとの交流も生まれた。
震災後の教訓として、クライシスマネジメントの重要性、代行者の明確化、クイック・レスポンス、「絶対」はない!「想定外」はある!などを挙げられた。
最後に、マイヤ髙田店のある陸前髙田市の現状に触れ、10年かけて12mかさ上げしたが、一般家屋は一軒もない。待ちきれず、みんな高台に家を建てたため、あるのは商業施設や金融機関、公共施設だけで砂漠化している。スーパーマーケットは地域街づくりの中心であるが、今後どのようにして復興に繋げていくのか、街の大きな課題となっているとした。
参加者からは多くの質問があり、米谷氏から実体験からくる様々なアドバイスをいただいた。最後に、越智委員長が御礼の挨拶を述べ、講演会が終了した。
南海トラフ地震は今後30年以内に70%~80%の発生確率と言われている。昨年、インフラ・防災委員会が実施したアンケート調査結果からも、徳島県の企業の危機意識、防災意識は十分とは言えず、事業継続計画(BCP)の策定状況も他県比、見劣りしている。今回のセミナーをひとつの契機とし、BCP策定、あるいはマニュアルのブラッシュアップ、社内体制の整備、訓練の実施など防災への取り組みが加速されることを期待している。