3月26日(金)、谷口真(しん)梁(りょう)氏(四国霊場第22番札所白水山平等寺住職)を講師に迎え、「四国八十八ケ所の宗教的特徴と普遍的価値」と題した四国遍路に関するWEB講演会が開催された。新型コロナウイルスの影響で、お遍路さんは昨年度9割以上減となっている。そのような状況のなか、谷口氏は以前より、お賽銭のキャッシュレス決済や、リモート参拝など先進的な試みを実践されており、今回の講演もニコニコ動画を通じて生配信された。時折ユーモアを交えたお話は大変興味深く、聴講した会員からも満足したとの声を聴くことができた。
<講演要旨>
◇弘法大師空海とは
・真言宗の開祖。
・四国遍路の信仰の対象。
・信仰上、空海はまだ生きているとされている(62歳で御入定※永遠の瞑想)。
・2023年(令5)には1250歳になるので、生誕祭にむけて、善通寺でイベントの準備が行われている。
・空海の「空」は虚空、空海の「海」は雲海、
よって「空海」は「無限にひろがる雲海」
という意味を有し、「大宇宙に遍満する大いなる雲海のような性質を有する者」を表している。※諸説あり
◇なぜ遍路をするのか?
・観光、トレッキング、修行など理由はさまざまだが、実は観光に見えても先祖供養など宗教的な意味合いをもって回っている人が多い。
・空海は永遠の瞑想に入りながらすべてのお遍路さんに付き添って歩き、遍路の目を借りて、自分のかつての足跡を確かめて廻っているといわれている。
・仏は「一切処(あらゆる場所で)」「一切時(あらゆる時間に)」に存在できる。ご先祖様も同じ状態にあると考えらえている。
・宗教的に一番大きな意義は「四国に行けばお大師さんになれるし、お大師さんにあえる」という考えにある。
◇四国遍路の特徴(普遍的価値)
①お接待文化
・お接待とはお遍路さんに無償で何かをしてあげ、見返りを求めないこと。
・食物・飲物を渡す、声かけをするなどちょっとした気遣い全てを「お接待」という。
・お接待をする理由は、「なんとなくいいことがしたい」「お接待することで自分の代わりにお遍路してくれる」などあるが、一番多いのは「お遍路さんはお大師さんだから」。
・お接待の原型は托鉢
※托鉢…東南アジアで今も行われている僧侶に供物をささげる行為。僧侶に供物を与えることで善業を積むことができる。僧侶は決して頭をさげない、お礼をいわない。
与えた側がいいことをさせてくれてありがとうとお礼を言う。
・遍路道は室町時代までは僧侶の修行の場。一般の人が歩き始めたのは江戸時代から。
・普通の人(俗なるもの)がお遍路さんになるだけでお大師さん(聖なるもの)になる。
・聖なるものと俗なるものが自由に入れ替わる世界、すなわち聖と俗の境目がない霊場「四国遍路」。これは他の巡礼地にはない大きな特徴。
②円環状巡礼
・88番まで廻ると、また1番の近くにいる。そこで、お礼参りをすると、2巡目が始まる。始まりも終わりもなくなる。お遍路は余計な考えが消え、ひたすら「今」目の前にあるものと向きあうことができるようになる。
始まりも終わりもない、真実の自分と向き合える場所。
③弘法大師の聖地巡礼
・宗教における聖地巡礼といえば
①開祖の生誕の地
②開祖が顕著な宗教体験を得た地
③開祖の終焉の地
弘法大師は①②はあるが、③はご入定の考えにより、終焉の地がない。ということは四国遍路には終わりがない、そもそも空海はまだ修行している。聖地巡礼には終わりがない。同行二人の旅には終着はない。
◇四国遍路の3大特徴
①聖も俗もなく(凡聖不二)
②始まりも終わりもなく(無始無終)
③生も死もない(不生不滅)
◇人生即遍路(種田山頭火)
一回遍路に出るとそれは死ぬまで続く。四国を旅している間だけではなく日常に戻ってもお大師さんとの二人旅は続いている。自分がそうなら周りの人もそうである。だから、あらゆる人を大切にするべきだ。