12月16日(月)、阿波観光ホテルにおいて、人口減少対応委員会講演会が開催された。本委員会では、人口減少問題の解決策の一つとして交流人口を増加させることにスポットを当て調査研究に取り組んでいる。
徳島県の現状を鑑みると定住人口を増加させることは大変厳しい現状があり、経済的側面からこれを補うためには、インバウンド旅行者や国内旅行者といった交流人口を増やし、地元へお金を落としてもらうことが必要となってくる。
そこで今回、公益財団法人徳島経済研究所との共催で、本研究所の交流人口の増加を通じた地域振興の取り組み、「渦潮オーシャンライン構想WG」に関する中間報告会を開催し、本会会員を含む44名が参加した。
最初に、荒木光二郎氏((公財)徳島経済研究所専務理事)より、徳島の観光の現状と渦潮オーシャンライン構想の総論についてご紹介いただいた。
■徳島の観光の現状
外国人にとっては、祖谷以外の徳島には興味がなかったり、徳島から高速バスで京都に行く方が早いといったことが知られていないのが現状としてある。一日120便の高速バスが淡路島を通過しているが、一日200便や300便ぐらいの潜在需要はある。また、途中で鳴門、淡路島、神戸を楽しむという発想もない。
■さまざまな課題
大塚国際美術館や鳴門の渦潮を鑑賞した後、大阪に帰る際に、高速バスまでの移動が分かりにくいといった問題がある。その他にも、鳴門公園エリア内、お遍路やドイツ館などとの連携、体験型コンテンツの開発、パンフレット・観光マップ類の使い勝手改善、地元ならではの詳細かつ有益な情報を得られるサイトの構築、多言語化対応といった課題が見受けられる。
■渦潮オーシャンライン構想の原点
外国人観光客はエリアで考えるため、「〇〇県に旅した」とは考えない。関西空港から入国した外国人旅行者に「関西方面のレジャーランドを楽しむ旅」として、USJなどに加え、淡路島、鳴門(大塚国際美術館、渦潮)を訪れてもらう。魅力ある観光コンテンツをつないだ広域周遊ルートをブランディングする。最初はキラーコンテンツである鳴門を大勢の観光客が訪れる四国観光の玄関口にすれば、徳島県の他の地域や四国といった他エリアにも波及するのではないかというのが発想の原点。構想のポイントは3つあり、一つ目は広域ブランディング、一つの観光圏として認識してもらうこと。二つ目が一次交通、二次交通といった交通の便の改善。三つ目が地域コンテンツの磨き上げである。
■渦潮オーシャンライン構想WG発足
USJ・淡路島・鳴門などをテーマパークと見立て、「渦潮オーシャンライン」としてブランディングし、USJと淡路島、鳴門をつなぐシャトル便を試験運行してみることを渦潮オーシャンライン構想のたたき台として提示した。WGの中では闊達な意見交換が交わされ、鳴門に来てもらった観光客に満足してもらうことが重要であり、コンテンツ磨きが一丁目一番地であることを認識させられる。
■3つの分科会
WGに3つの分科会が発足する。受入態勢整備分科会、交通手段整備分科会については先行して発足し、プロモーション分科会については、体制が整ったところで立ち上げる。3つの分科会の活動を通じて、観光振興に継続的に取り組む組織が立ち上がっていくことを一つの狙いにしている。
■やる気のある人・組織があれば観光は変わる
大歩危・祖谷の外国人宿泊者数は10年間で34倍にもなり、また熊野古道を舞台とした田辺市熊野ツーリズムビューローの活躍により、田辺市の訪日外国人延べ宿泊者数は5年間で10倍になった。
次に、元木秀章氏((公財)徳島経済研究所上席研究員)より分科会の具体的な議論について紹介があった。
■受入態勢整備分科会での議論
地域コンテンツの磨き上げを中心に議論している分科会。
【課題】
一つ目として、トップシーズンや混雑時などでの渋滞・駐車場不足や鳴門公園エリア~高速鳴門バス停・鳴門駅・徳島駅間の移動といった鳴門公園エリアへのアクセスの問題。二つ目として、鳴門公園内エリア内の移動手段の確保やインバウンド客への対応といった鳴門公園エリアでの受入態勢の問題。三つ目として、観光資源が点在し、「面」としてつながっていない、地域内の観光推進の取り組みがバラバラで観光関係者の一体感がないといった旅行者への満足度向上への取り組み。最後に、観光まちづくりを中心になって活動する推進組織が見えない、おススメコンテンツの情報発信がないといった課題があげられた。
【地域コンテンツの磨き上げ】
分科会のメンバーによるアンケート調査から抽出した67件のおススメコンテンツについて現在精査している。また、ターゲットを意識した地域ならではの観光資源を抽出することが重要であるとの考えのもと、ターゲットを意識した旅行商品・ツーリズムの提案について検討している。
【様々な主体、他地域との連携】
イーストとくしま観光推進機構、徳島市、県内各市町村との連携、本州四国連絡高速道路株式会社との連携を考えている。
【観光まちづくりに向けた体制づくり】
「撫養街道まちづくり協議会」が発足。鳴門エリアの活性化に向け、地元の事業者が主体的に活動する組織であり、コンテンツ磨きを中心にやっている。まずは鳴門のルーツを掘り下げて、新たなツーリズムの造成や提案につなげていくことを検討している。
■交通手段分科会での議論
一次交通の整備を中心に議論しており、大阪からいかにバスで徳島に来てもらうかといった視点で進めている分科会。
【公共交通機関を利用した観光の利便性向上】
関西空港から鳴門公園口に直接停車するルートが完成。また徳島駅から鳴門公園エリア間の運行時間の短縮(88分から61分に短縮)、運行本数の増加による積み残しの解消が実現。
【高速バスの利用促進】
インバウンド客の認知の低さ、バス利用のわかりにくさを解消しなければならない。
【関西からのオプショナルツアー商品の造成・提案】
インバウンド向けのフリーパスの新設を検討している。現在も訪日外国人向け路線バス・フリー乗車券があるが、どこで売っているか分からなかったり、売り場までたどり着けないといった問題がある。
最後に、大川宗男氏(本州四国連絡高速道路㈱エグゼクティブエキスパート)と徳重正恵氏(㈱シマトワークス取締役)より各々の取り組みについて紹介があった。
大川氏からは、神戸・淡路・鳴門、瀬戸大橋、しまなみ海道の各ルートの周遊観光ワークショップについて紹介があった。
徳重氏からは㈱シマトワークスが実施している漁協と連携した見学コンテンツや自然の中のケータリング、夜のバーホッピング等のツアー内容について紹介があった。