セミナー(2022.9.1)

 9月1日(木)、あわぎんホールにおいて、加藤貴弘氏(徳島県危機管理環境部グリーン社会推進課 水素グリッド推進室 室長)を講師に迎え、『カーボンニュートラル実現に向けた徳島の取組みについて』と題して、講演会が開催された。本セミナーは産業振興・グリーン産業研究委員会の企画により実施され、三好代表幹事、三木代表幹事をはじめ20名が参加した。

 講演に先立ち、同委員会の委員長を務める三木代表幹事が、「徳島県においては、カーボンニュートラル達成に向け目標を掲げて行動している企業は少なく、意識もまだまだ低いように思う。自発的に取組んでビジネスチャンスにつなげていく必要がある。同友会としては、知識を深めしっかり学ぶ中で、どのようなことができるのか研究していきたい。まずは、徳島県がどのような取組みをしているのか、お教えいただき、これをきっかけとし、現状認識するとともに今後につながるテーマを見出したい」と挨拶された。

 

<講演要旨>

 地球温暖化、世界的な気候変動について統計データを基に詳しく説明があった。世界的に平均気温の上昇が顕著であり、日本でも猛暑日が増加し、農作物や漁獲量への影響がでている。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が評価報告書を公表しているが、地球温暖化は人間活動の影響によって引き起こされたことに疑う余地がない。そしてCO₂排出の大部分は、化石燃料の燃焼や工業プロセスに起因している。CO₂排出量は戦後急増しており、エネルギー起源CO₂排出量は、中国とアメリカの2か国で43.5%を占めており、日本も世界で5番目のCO₂排出国である。

 カーボンニュートラルとは、「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」こと。大阪・関西万博では、会場をカーボンニュートラルにするとのことだが、世界から多くの人々が飛行機でやってくる。飛行機はCO₂を排出するので、その分を徳島の山に植林してCO₂を吸収するというアイデアもある。     

 徳島県は自然エネルギー協議会の「会長県」として全国を牽引。同協議会は、これまで様々な政策提言を行い、再生可能エネルギーによる2030年度の発電比率「36%~38%」への引き上げなど、成果をもたらした。また、徳島県は昨年「脱炭素ロードマップ」を策定している。2030年度の目標として、温室効果ガス実質排出50%減、自然エネ電力自給率50%超を掲げており、進捗状況は概ね順調である。徳島は、水力をはじめ自然エネルギーが豊富。風力、バイオマス、太陽光など民間事業者の動きも活発になってきている。また、「水素立県徳島」を加速する供給拠点の整備拡充、FCバスの拡充等も計画されている。FCバスは、現在2台が運行しているが、7か月間でCO₂を48トン削減という効果がでている。水素グリッド構想の推進は重点施策のひとつであり、水素は究極のクリーンエネルギーとして期待が大きい。今後は、日本全体のCO₂総排出量の約2割を占める運輸部門の脱炭素化を実現するため、技術開発が進み、大型のFCトラックが開発され市場に提供されることが望まれる。

 最後に、カーボンニュートラルポート(CNP)構想について説明があった。CO₂排出量の約6割を占める産業の多くが立地する港湾の脱炭素化を図るため、港湾を水素・アンモニア等の大量かつ安定・安価な輸入拠点とする構想。近隣では神戸港があるが、四国では高松港、坂出港、新居浜港の3港で検討・計画されている。徳島県については、明日9月2日に「第1回徳島小松島港カーボンニュートラル協議会」が開催される予定であり、CNP形成の検討が始まる。水素は貯蔵することができ、将来は石油に代わる輸入物になるのではないか。

講演終了後は質疑応答に移った。

<質疑1>徳島県の脱炭素ロードマップにおける2030年度目標に対する現在の進捗状況はどうなっているか。

→ 温室効果ガス削減は40%近くまで減っている。ここからの積み上げの中では、企業側の電力のグリーン化も必要になってくる。

<質疑2>水素を製造する過程、そして輸送(輸入)することで発生するCO₂とのアンバランスが生じるのではないか。

→ 東亞合成㈱徳島工場の水素ステーションについて言えば、苛性ソーダを製造する工程で発生する水素を利用するものであり、副生水素と呼ばれる。このような工場は全国にあるので拡がっていけばいい。基本的には、グリーン水素(自然エネルギー由来の水素エネルギー)が望ましい。輸送(輸入)については、大量に運ぶことで輸送に伴うCO₂の排出をカバーできるのではないか。水素を液体にすればより大量に効率的に運べるが、危険(爆発するリスク)があり、ボンベ等にまだ技術的な課題がある。しかしながら、将来的にはガソリンと同じように自分で入れるようになるのではと考えている。

<質疑3>すでにCO₂を吸収しなくなった杉を切り出して活用し、そのあとに植林していく。なぜこういったことが進まないのか。県産材を活用しつつCO₂を吸収するといったビジネスモデルの構築を期待している。県としては、どのような課題を持ってどのように取組んでいるのか。

→ 公共建築には県産材を使用しているが、やはり輸入木材が安価であることが県産材が普及しない大きな要因。県としては、補助金制度等様々な支援を打ち出してはいる。切り出した材木の輸送コストの低減についても今後検討して参りたい。

 

 以上、今回のセミナーで徳島県のカーボンニュートラルに対する取り組み状況がよく分かった。これを踏まえ、産業振興・グリーン産業研究委員会では、具体的な課題の抽出に向けて委員間での議論を深めていく予定である。

産業振興・グリーン産業研究委員会

概要

委員長 三木 康弘
(阿波製紙株式会社 取締役社長)
副委員長

伊丹 章 (化研テクノ株式会社 代表取締役会長)
伊丹 浩之(鹿島建設株式会社 所長)

岡本 省吾(リコージャパン株式会社徳島支社 支社長)

柏原 亮 (株式会社日本政策投資銀行四国支店 支店長)

岸本 耕三(株式会社ぶつだんのもり 代表取締役社長)

藤崎 耕治(株式会社GF 代表取締役)

活動方針

新型コロナウイルスのパンデミックによって、多くの地場産業の基盤は損害を受け、またすべての事業者のスタイルが Withコロナ体制へと変革してきている。加えて2050年カーボンニュートラル目標に向けた事業環境変化への対応が、大きな課題となってきている。本委員会は、降りかかる課題をビジネスチャンスと捉えられるように、研究し、自治体や地域企業・団体にイノベーション機会を提議していきたいと考えている。

活動計画

 1. DXとGXを活用した世界的「グリーンリカバリー」の潮流を学ぶ

 2. 先進的取り組みをしている企業を訪問し、体感する 

 3.徳島の強みを抽出し、2030年と2050年のビジョンを描く

 4.産学官連携した取り組みの提言を行う

     以上は単年度活動ではなく、2ヵ年をかけて成果をつくるものとしたい。