7月4日(月)14時から、ザ・グランドパレスにおいて、毎年恒例の夏季経済講演会が開催された。講師には、早稲田大学名誉教授で経済学博士の田村正勝氏を迎え、『景気見通しとコロナ禍・ウクライナ問題』と題して講演いただいた。本会からは三好代表幹事をはじめ43名が参加した。
<講演要旨>
日本経済の現状について、格差が拡がっており、上位10%が富の41%を占めている状況。非正規雇用の拡大が実質賃金の低下を招き、格差拡大を助長し消費不況に陥っている。また、格差の拡大は出生率の低下につながり、日本の合計特殊出生率は1.30まで低下しており将来的に労働人口は激減する。一方、フランスでは6割が婚外子であり、社会で子どもを育てる環境を整えることで出生率は回復している。
次に日銀による円安誘導政策については、輸出主導経済の追求であり、大手輸出製造業にとっては利益となるが、中小企業にはプラスにならない。円安による輸入原材料の高騰は中小企業の利益を圧迫する。大企業による中小企業買いたたきを防ぐため、中小企業庁が「パートナーシップ構築」を提唱しているが強制力はない。いかに中小企業がスクラムを組み大手企業に対抗していくのかが大きな課題である。家計についても所得格差は拡大しており、ジニ係数は0.372と先進国で米国に次いで高い。相対的貧困率も15.7%と高い水準にある。
円安政策は輸入物価を押し上げ、企業物価が上昇する。日本の輸入の7割がドル建て、輸出の5割がドル建てであり、この差の分貿易赤字は拡大し、今や日本の円の実力、「実質実効為替レート」は大きく低下している。
これらを克服するには、①中小企業の拮抗力に拠る利益確保と賃上げに拠る格差是正と消費力の回復②大手企業と高所得者に対する増税③無利子100年国債に拠る赤字国債の借り換え(国債費を約15兆円削減できその分社会保障に充当できる)などの施策が必要である。
最後に、ウクライナ問題については国家の領土より人命が大事。ロシア人の多い地域をウクライナの自治共和州にし、ウクライナがNATOに加盟しないことを条件に戦争を終結させるべきだとした。